CBX エンジンの可能性/シリンダー

今回はCBXに限る話ではなく、比較的低年式の鋳鉄ライナーを使った空冷エンジンの話です。

シリンダーの下側、ライナーとの隙間に多くはOリングが入っています。
このOリングは何をしているのでしょう、クランクケースとの隙間を埋めてオイル漏れを止めているわけではありません。
ライナーとの隙間に入っているので、シリンダーとライナーの間からのオイル上がりを止めているのです。
そんな事が起こるのかと思われるかもしれませんが、ライナーが緩くなってしまうと起こり得るのです。しかしこの場合上がってきたオイルは燃焼室に入るのではなくヘッドとの合わせ目から滲んでいきます。続きはコチラ!

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CBXのシリンダーでも時々あるのですが、ライナーが緩くなってしまってボーリングなどの時に回ってしまうシリンダーがあります。
回る事を止めるだけであれば回り止めをすれば良いのですが、あまりに緩くなってしまうと回り止めしても他に問題が出てきてしまいます。
オイルが上がってきてしまうのは勿論なのですが、オーバーヒートの原因になりかねないからです。

まずシリンダーのアルミとライナーの鋳鉄では熱膨張率が違います。アルミの方が膨張率が大きく簡単に回ってしまうライナーでは熱が加わったときシリンダーと隙間が出来てしまいます。
通常金属どうしが接触することにより熱が伝わり放熱出来るのですが、そこに空気の層が出来てしまうと熱伝導が無くなりシリンダー自体が冷却されてもライナーは冷却されないという事態になります。
空気ではなくオイルでも金属より熱伝導率はかなり落ちます。
勿論完全に浮いる事はあせんので全く冷却されない訳ではありませんが、冷却効率が落ちる事は確かです。

なのであまりに緩くなってしまったライナーは新たに製作して交換しなければなりません。
そして、熱伝導率でも鉄よりアルミの方が大きいので、ライナーをアルミにすれば膨張率も近くなり放熱性が上がり、さらに鍛造ピストンを使用した場合などクリアランスも鋳鉄ライナーよりは小さく出来ます。
さらに言えばシリンダーを総削りすればライナーとの接触面に頼ることなく素材事態の熱伝導率で放熱出来るので一番の理想形ではありますが。シリンダーを削り出すというのはシリンダー強度を上げられるとかの他にそういったメリットもあります。

最近のセラミックコンポジットメッキとかニッケルボロンメッキなど鋳鉄ライナーより耐久性を上げられ、使用するピストンや条件にも依りますが街乗りレベルであれば10万km走ってもリング交換だけで済んでしまう事もあります。

まあその前に相当のコストをかけなければ実現出来ませんが。